
任意売却は、債務者にとって競売よりもメリットのある方法です。
しかし、債務の状況や物件によっては、必ずしも成功するとはいい切れません。
近年、任意売却のメリットばかり注目されるがために、後から問題が発生するケースも増えています。
あとで困らないよう事前に任意売却で起こりやすいトラブルを知っておきましょう。
債務がなくなる!?
任意売却をしたからといって、債務を完済できるとは限りません。
ただし、債務を売却代金で補うことで少なくすることは可能です。
また、債権者との交渉によって、以降の支払いを無理のない形に変更することもできます。
さらに、任意売却することで支払う意思と誠意を表明し、債権者の理解を得ることができれば、月々の返済額を当初のローン返済額より少なくすることもできます。
しかしながら、残った債務をきちんと支払う義務は残りますので、注意しましょう。
任意売却の成功率は100%!?
任意売却は万能ではありません。
任意売却の流れを見ればわかることですが、売却は買い手があらわれなければ成立しません。
購入希望者があらわれても、双方の交渉がうまくいかなければ、売却はできないのです。
あくまで、「市場価格よりも安い価格で落札される競売」よりも有利な金額で売却でき、債権者との交渉の余地が残されるというものなのです。
また、任意売却では親族や親しい方に買い手になってもらう買い戻しという方法もありますが、ここでは信頼関係が大切になってきます。
それまでうまくいっていた関係が、ふとしたことでギクシャクしてしまうこともあります。
任意売却を成功させるためには、慎重で冷静な判断が必要なのです。
連帯保証人の責任がなくなる!?
よくあるケースが、マイホームをローンで購入した後に離婚した場合です。夫名義で不動産を購入し、妻が連帯保証人となっている場合がよくあります。
連帯保証人は債務者と同等の責任を負います。つまり債務者と同じ立場で、いつでも債務の履行を請求されることになるのです。
債務者が滞納することなくローンを返済していれば、連帯保証人に請求がいくことはありませんが、債務者が滞納すると「いつでも」連帯保証人に請求がいきますので、連帯保証人に迷惑がかかってしまうことになります。
連帯保証人になることは債権者との契約ですから、離婚したかどうかは考慮されません。返済を滞納してしまえば、連帯保証人のもとに請求がいくのは避けられないのです。
引越し代の誤解
ほとんどの場合、引越し代は売却代金の中から捻出されますが、法的に保証されているものではありません。
引越し代は、債権者との交渉で配慮してもらえるものであって、債務者の権利ではないのです。
あくまで配慮であるため、高額な金額を引越し代として要求することは、交渉において適切であるとはいえません。
都合のよすぎる話には要注意!
任意売却を請け負う業者の中には、「キャッシュバックとして●●万円」「引越し代を●●万円」といった甘い言葉で契約を迫る業者もあります。
前述のとおり、債務者の置かれている状況や物件によって、任意売却の成否は変わってくるのです。
そのため、現状を冷静に判断し、適切な方法を提案し、誠実に行動してくれる業者を選ぶ必要があります。
焦る気持ちに押され、急いで契約してしまい、転売目的で不動産を安く買い叩かれるといったことがないよう気をつけましょう。
少しでもわからないことがあれば、納得のいくまでとことん質問して、信頼のおける業者を選ぶことが任意売却の成功につながります。